小児救急などに対応する専門分野を目指すなら、将来のキャリアは明るい

子供より親との関係が重要

小児科は、一般的には15歳、つまり中学生までの「小児」を診察の対象としていますが、「小児=大人の小型版」ではありません。診察する病気が似ているからといって、内科医が「子供が好きだから」といった安易な気持ちで、小児科に転科するのは危険です。

小さい子供は診察時に医師の言うことを理解してじっとしてくれませんし、ちょっとしたことですぐに泣き出したりするので、一人あたりの診察時間も長く、少ない人数で外来と入院を担当するなど激務なため、慢性的に医師が不足している診療科となっています。

人工透析、内科などに転科して小児科を去っていく医師も少なくないため、激務→医師不足→激務という悪循環に陥っている医療機関もあります。

なかでも小児集中治療室(PICU)は施設数が全国で不足しているため、広範囲から患者が搬送され、医師の労働環境は苛酷です。ただし、小児救急の歴史は浅く、これからの成長が期待できる分野ですので、今のうちに転科をし、治療技術を磨いておけば、10〜15年後には明るい医師人生が待っていると思われます。

子供好きであることが、小児科医に求められる最低条件であることは勿論ですが、コミュニケーションが十分にとれない乳児や小さい子供に代わって話を訊くことになるのは子供の親ですので、親と十分な信頼関係を築くことのできる人材が求められます。近年は女性医師によるワークシェアリングや短時間勤務で科を回すなど、女性のワークライフバランスを実現するための環境づくりで医師を確保しようという動きも出ていますので、比較的女性の方が理想の医療機関を見つけやすいといえます。

小児科の代表的な疾患

独特の診療点数が設定されています

かぜ
上気道(鼻・咽頭・喉頭)が急性炎症を起こす疾患の総称を「かぜ症候群」といい、「普通感冒」ともいいます。原因の大半はウイルスへの感染ですが、的確にとらえる特効薬はないため、咳や痰、鼻水などの症状に対する対症療法が、治療の中心となります。

インフルエンザ
インフルエンザウイルスによって引き起こされる病気で、ウイルスにはA型(A香港、Aソ連など)・B型・C型の3つのタイプがあります。タミフルやリレンザなど高い治療効果を示す治療薬が登場していますが、症状が初期の頃に投与しないと効果は期待できません。

気管支喘息
小児の気管支喘息は、成人に比べてアレルギー体質が原因となっているケースが多いのが特徴です。近年、慢性の気道の炎症が喘息の本体であると考えられるようになり、急性の発作の抑制に加えて、慢性気道炎の治療も重視されるようになりました。急性発作に対する治療では、発作を止める薬が処方されます。長期管理でも薬物療法は行われますが、アレルゲンを特定し、それを避けるよう努力することが前提となります。

水痘(水疱瘡)
ウイルス感染で起こる病気で、初めてウイルスに罹患した時は水疱瘡を発症し、水疱瘡が治癒した後も感染者の神経根に潜んでいたウイルスが活動を再開した時は、帯状疱疹を発症します。治療に際しては、対症療法として、痛みやかゆみを抑える塗り薬と飲み薬が処方されます。

乳児嘔吐下痢症
ロタウイルスなどの感染で起こり、白い液体状の便が出ます。治療では、吐き気止め、下痢止めが処方されますが、家庭での食事療法(症状が落ち着いてから、イオン飲料・番茶・野菜スープなどを少しずつ飲ませる等)も重要になります。下痢の症状がひどく、水分摂取が十分に行えない場合には、点滴の必要があります。